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【特別寄稿】フラッシュストレージの性能を左右するコントローラとソフトウェア - 第1回

フラッシュメモリを使った代表的なストレージ

執筆: 福田 昭 公開: 2024年1月12日
この記事の執筆者
福田 昭

半導体に特化した専門ジャーナリストとして、半導体技術の進化や市場のトレンドなど焦点を当てた深い洞察を業界内外の読者に提供しています。次世代メモリ技術、次世代CMOS技術、企業・市場分析など、最新の業界トピックスに関する独自の分析は、専門家や興味を持つ読者にとって重要な情報源として高く評価されています。

様々なフラッシュストレージ製品

フラッシュストレージとは何か

「フラッシュストレージ」とは、フラッシュメモリを記憶媒体とするストレージ(データを保存しておくモジュールや装置などを指します。世の中に存在するストレージは必ず、データを保存しておく媒体(記憶媒体)を備えています。具体的には、磁気記憶媒体(磁気ディスクと磁気テープ)や光記憶媒体(光ディスク)、電子記憶媒体(半導体不揮発性メモリ)などがあります。

ストレージ、ストレージ用記憶媒体、ストレージ用記憶技術(記憶媒体)の例
ストレージと記憶媒体

ストレージに共通の特徴は、外部からエネルギーを供給せずとも、データを保存しておけることです。例えば電力によってデータを出し入れするストレージは、電力の供給を断っても、データが残ります。このため、ストレージの記憶媒体には外部からのエネルギーがなくてもデータを記憶しておく性質、「不揮発性」が求められます。

フラッシュメモリは半導体不揮発性メモリに分類される記憶媒体であり、ほかの半導体メモリ(揮発性と不揮発性の両方を含む)に比べて記憶密度(単位面積当たりの記憶容量)が高いという特長があります。

フラッシュストレージの強みと弱み

フラッシュストレージの強みは、機械的な部品を必要としないことです。ディスク媒体のストレージ(磁気ディスク装置と光ディスク装置)は回転機構やトラッキング機構などの機械的な部品が必須であり、そのために機械的な故障の発生リスクがあります。テープ媒体のストレージ(磁気テープ装置)も同様です。これに対してフラッシュストレージは機械的な部品がないので、機械的な故障の恐れがなく、信頼性が高いと言えます。

もう一つの大きな強みは、フラッシュストレージは小さく軽く薄くできることです。ディスクタイプのストレージは、ディスクの大きさと機械部品が小型化と薄型化の障害となります。一定の大きさと厚みになることは避けられません。フラッシュストレージの最小構成は1枚のフラッシュメモリチップと1枚のコントローラチップだけです。チップ(厳密にはパッケージ)の厚みは1.5mm前後、チップの大きさは10mm角前後しかありません。この結果、2cm(20mm)角以下と非常に小さなカードタイプのフラッシュストレージが現在では商品化されています。

一方でフラッシュストレージには弱点もあります。最大の弱点は、記憶媒体であるフラッシュメモリが書き換えや時間経過などによって劣化することです。例えば磁気ディスク装置はデータの書き換え回数に制限がありません。またデータを保存しておける期間は半永久的です。しかしフラッシュメモリは、データの書き換え回数と保存期間に制限があります。書き換え回数は多くても10万回、データ保存期間は10年間です。

フラッシュストレージの基本構成

フラッシュストレージにはいくつかの種類があります。その基本構成はほぼ同じで、記憶媒体であるフラッシュメモリと、制御チップであるコントローラ、それからソフトウェアで成り立っています。すでに説明したようにフラッシュメモリにはいくつかの弱点があります。コントローラはその弱点を補うとともに、フラッシュメモリを正常に動かし、ホストマシンとデータをやり取りします。

ユーザーから見ると、フラッシュメモリの扱いはかなり面倒です。さらに、メモリメーカーによる特性の微妙な違いを扱うことは困難です。そこでコントローラと共通インタフェースによってフラッシュストレージとすることより、ユーザーにとって取り扱いやすいものにしています。コントローラはフラッシュストレージにとって不可欠なものだとも言えます。コントローラについては次回以降でもう少し詳しく説明する予定です。

フラッシュストレージとは何か、フラッシュストレージの基本構成
フラッシュストレージの基本構成

代表的なフラッシュストレージ

代表的なフラッシュストレージにはSSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカード、eMMC(embedded Multi Media Card)、UFS(Universal Flash Storage)、UFSカードなどがあります。これらのフラッシュストレージは普通、外形寸法(フォームファクタ)や入出力インタフェースなどが共通仕様として規格化されており、ユーザーは複数のベンダーから同類の製品を購入できる仕組みになっています。

そのほか、大手ユーザー企業がフォームファクタやインタフェースなどを独自に策定するカスタム品のフラッシュストレージがあります。カスタム品は機器本体に内蔵するのがふつうです。スマートフォンやメディアタブレットなどのモバイル機器では、記憶容量や外形寸法(特に厚み)、性能などの要求が独特であることから、カスタム品のフラッシュストレージを内蔵することは珍しくありません。ただしリソースの負担が大きいので、大半のユーザーは後述するeMMCを内蔵ストレージに採用しています。

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代表的なフラッシュストレージ

以下は、代表的なフラッシュストレージを簡単に説明していきます。順番は上記の通りです。

大容量、高速、高信頼のSSD

SSDはあらゆるフラッシュストレージなかで記憶容量が最も大きく、読み出しと書き込みの速度が最も高く、信頼性が最も高いという特徴を備えています。SSDの読み方は「エスエスディー」あるいは「ソリッドステートドライブ」です。

パソコン(PC)やサーバーなどのコンピュータシステムでは、SSDが登場する以前のストレージは磁気ディスク装置(HDD:Hard Disc Drive)でした。SSDベンダーは当初、HDDをSSDで置き換えることによる普及を図りました。このため、外形寸法(フォームファクタ)は2.5インチHDDとほぼ同じ、インタフェースはHDDと同じSATA(Serial AT Attachment)を採用していました。SATAインタフェースの速度は改訂3版(Rev.3)で最高6Gbps(750Mバイト/秒)となっています。

最近では、PCI Expressインタフェースを採用したSSDが増えています。SATAよりも高速なPCI Expressインタフェースの採用により、SSDのデータ転送速度はHDDを大幅に上回るようになりました。SSDは強力なコントローラを搭載することで、フラッシュメモリを制御するとともに書き換えサイクルやデータ保持期間などの寿命を伸ばしています。

SSDの例(外観写真)
SSDの例(外観写真)。2.5インチ型HDDの置き換えを想定してSATAインタフェースを採用している

手軽さが魅力のUSBメモリ

USBメモリはUSBインタフェースを介してデータをホストマシン(ノートPCやデスクトップPCなど)とデータをやり取りするフラッシュストレージです。大きさは単3乾電池大で、SSDに比べると小さくて扱いやすい、お手軽なストレージと言えます。USBメモリをPCのUSBポートに差し込むだけで、PC内蔵ストレージあるいはほかの外付けストレージとデータを双方向でコピーできるようになります。

USBメモリの記憶容量は、SSDに比べると小さめです。また本来の目的は一時的な保管庫(リムーバブルディスク)なので、長期信頼性ではSSDに劣るとみられます。

USBメモリの例(外観写真)
USBメモリの例(外観写真)。USB 3.0インタフェースに対応している

デジタルカメラで主流となったSDカード

デジタルカメラの撮影画像を格納するストレージはかつて、いろいろな規格の小型フラッシュストレージが登場して市場競争を繰り広げていました。その中から競争を勝ち抜いて主流となったのが、SDメモリカード(SDカード)です。

SDカードは外形寸法を変えずに大容量化と高速化を進めてきました。並行して外形寸法を小さくした「miniSD」カード、さらに小さくした「microSD」カードを開発したことが、市場への普及を促しました。現在ではminiSDカードはほとんど使われていません。標準サイズであるSDカードと、超小型サイズであるmicroSDカードが主に使われています。

SDカードの例(外観写真)
SDカードの例(外観写真)。初期の製品

モバイル機器に広く普及したeMMC

SDカードには、ベースとなるカードタイプのフラッシュストレージがあります。それが「MMC(Multi Media Card)」です。SDカードが普及したために、MMCは一時期を除いてあまり普及しませんでした(SDカードはMMCの上位互換カード)。

eMMC(embedded MMC)は組み込み向けに開発されたフラッシュストレージで、MMCと名称は似ているものの、外見はまったく違います。eMMCはカードではなく、FBGAパッケージです。インタフェースはMMCと変わりません。なお大きさは11mm角~13mm角ほどで、わずかながらベンダーによる違いがあります。

eMMCはBGAパッケージですから、プリント基板にはんだ付けすることになります。制御ソフトウェアはSDカードと似ており、ほんの少しの手直しで対応できます。これらの特徴から、スマートフォン、携帯電話端末、デジタルカメラ、カーナビ、携帯型音楽プレーヤ、ICレコーダなどの内蔵型フラッシュストレージとして広く採用されるようになりました。

eMMCの高速版となるUFS

UFS(Universal Flash Storage)は、eMMCの後継として開発されたモバイル用フラッシュストレージです。eMMCはデータの入出力に8bit並列の入出力共用インタフェース(パラレルインタフェース)を採用しています。このため、隣接信号線間の干渉が高速化を阻んでいました。

UFSは差動伝送方式のシリアルインタフェースを採用することで、eMMCよりも大幅な高速化を達成しています。2線式の差動信号バスは入力専用と出力専用があり、合計で4線式となっているので、eMMCとは違ってデータの入力と出力を同時に実行することも可能です。フォームファクタはeMMCと同じ、FBGAを採用しています。

現在では安価な普及品がeMMC、高価なハイエンド品がUFSという位置づけになっています。ただし両者には互換性がありません。フォームファクタは似ていますが、中身はまった別物です。

SDカードの置き換えを狙うUFSカード

UFSはモバイル機器の内蔵用フラッシュストレージのほかに、カードタイプのストレージが当初から想定されていました。それがUFSカード(UFSメモリカード)です。SDカードの置き換えを狙って開発されました。このため、UFSカードのフォームファクタはSDカードに似ています。

現在のところ、UFSカードを販売しているのはSamsung Electronics(サムスン電子)だけです。UFSカードが普及するかどうかは、まだ分かりません。

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福田 昭

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